『まちづくりと商業活性化に関する意識調査』結果概要

1999年3月
調査委託機関：中小企業庁小売商業課
調査実施機関：㈱日本アプライドリサーチ研究所

この概要は、「まちづくり三法」（中心市街地活性化法、大規模小売店舗立地法、改正都市計画法）などに関する中小小売商店事業者の方々の認識を探り、今後の施策運営の参考とする目的で、通商産業省中小企業庁が実施した「まちづくりと商業活性化に関する意識調査」の報告を要約したものである。
調査時期 1998年9月～10月調査対象全国の中小小売商店6,405点
有効回答数 2,226 回収率 35.1%

１

商店プロフィール

　商店の従業員規模は5名以下のところが７割弱を占め、中でも2名以下が４割弱で、小規模零細性が見られる（図表１）。商店経営者の年齢構成でもっとも多い層は、50代で全体の４割を占める、また、60代以上の経営者も４割に達している（図表２）。

２

商店街の近況

① 近年の経営状態
　ここ３年程度の経営状態では、業績が向上したとする商店は3%強にすぎず、業績が悪化したとするところが７割を超えている。こうした傾向はより小規模の商店ほど顕著である（図表３）。

② 将来の経営見通し
今後５年程度の経営見通しについても悲観的な見通しが大勢を占めており、６割強が業績が厳しくなるとしている。現在の業績との関連では、現在業績が向上したとする層ほど、将来についても楽観的で、逆に現在の業績が悪いとする層では、より業績が厳しくなるとみている層が多く、今後現状の業績格差が一層拡大することが予想される（図表４）。

③ 商店街の状態
　全体に活気が低下しているとする商店街が７割弱を占め、多くの店舗で活気があるとするところは3%強にすぎない。都市規模や商店街規模との関連では、小都市ほど、小規模商店街ほど相対的に厳しい状況にある（図表５）。
　活気喪失の原因については、総じて、既存店の営業努力の不足、大型店の周辺や郊外への進出、道路や駐車場整備の遅れが指摘されている（図表６）。

④ 商店街の将来展望
　発展するとする層は7%弱で、過半数が縮小・衰退するとしている。個別商店の場合と同様に、現在の活気の状態と将来の見通しは相関しており、縮小・衰退は現在活気が低下しているところでより顕著になると見られる（図表７）。

３

商店街の再活性化とまちづくりの方向性

① まちづくり三法の認知度
　まちづくり三法について話は聞いている（38.7％）、一部内容を知っている（36.0％）という層が多い。30店未満の商店街でやや認知度が低い（図表８）。
大店法の廃止やまちづくり三法における地元自治体のイニシアティブの重視という政策転換への賛否については、賛意を示す層が42.7％と、否定的な層（16.6％）を大きく上回るものの、賛否を留保している層が40.7％ときわめて高い割合を示しており、事業者の戸惑いが示されている。政策転換への賛意は、まちづくり三法の内容を知っているほど、高い傾向が認められる（図表９）。

② まちづくり三法各法の認知度
　「中心市街地活性化法」「大規模小売店舗立地法」「改正都市計画法」の個別認知度を見ると、「中心市街地活性化法」が相対的に認知度が高いのがわかる。また、50～99店という中規模の商店街で他と比べ認知度が多少高い傾向が見られる。一方、「知らなかった」とする層の割合は、30店未満の小規模商店街で高い（図表１０）。

③ 土地利用規制の必要性
　現在以上の土地利用規制の必要性については、必要とする層が６割以上を示している。また、「改正都市計画法」への認知度が高い層ほど、その傾向は強まる（図表１１）。

④ 三法を活用したまちづくりへの取り組み
　まちづくり三法を活用した商店街や自治体の取り組みが積極化するかどうかについては、全体では見方が二分されているが、まちづくり三法に対する認知度が高いほど、肯定的な回答が多くなっている（図表１２）。

⑤ 大店法に対する評価
大店法に対しては、一方で中小小売商業者が保護されてきたという評価があるものの、保護効果が薄れ、商店の経営意欲の低下を招き、既存大型店の既得権につながったという見方が、これを上回っている（図表１３）。

図表１３大店法に対する評価

⑥ 大型店出店に求められる配慮
　「商店街近接型大型店」に対しては、商店街との連携や回遊性の確保がもっとも求められており、渋滞など交通問題への対応がこれに次いでいる（図表１４）。「郊外型大型店」に対しては、渋滞など交通問題が第一にあげられ、高齢者等交通弱者の購買機会の確保がこれに次いでいる。さらに、周辺の景観との調和などの事項への配慮も求められている（図表１５）。

図表１４商店街近接型大型店に求める配慮

図表１５郊外型大型店に求める配慮

⑦ 住民の大型店出店に対する意識
　大型店の出店に対して地元住民はどうとらえているかに関する商店サイドの見方は、商店街近接型、郊外型ともに、歓迎しているという意見が、反対しているという意見をそれぞれ４倍、2.3倍上回っている。ただし、商店街近接型の場合、地域への協力姿勢によるという意見も４割弱存在している。また、郊外型では、わからないとする回答も４分の１弱見られる（図表１６）。

図表１６住民の大型店出店に対する意識

⑧ 商店街の存在価値とその内容
　商店街の存在価値が高まるという評価は１割前後であるが、都市規模が大きいほど、また、商店街規模が大きくなるほど、一定の存在価値は存続するという回答が増大する。ただし、30店未満の小規模商店街では、存在価値が徐々に弱まるとする意見が半数弱を占める（図表１７）。
商店街の存在価値の内容は、高齢者等住民の身近な購買機会の提供、地域の賑わいの創出、他の公共機能等と相まった利便性の提供などが中心となっている（図表１８）。

⑨ まちづくりの意義
　まちづくりの意義については、個性ある個店づくりが第一にあげられ、これに駐車場の整備・拡充、積極的な再開発や区画整理、不足業種の誘致・開業促進、空店舗の撤去・別用途の開発などが次いでいる（図表１９）。

図表１９まちづくりの意義（マルチ回答）

⑩ まちづくりの効率的推進の上での問題点
　商店街の現状とまちづくりの効率的推進の上での問題点との関連を見ると、活気があるとするところでは、まちづくりの強力な推進組織の不在、まちづくりの内容がよく理解されていないことなどをより強く指摘し、活気が低下しているところでは、地域の行政の消極性や、商店街・商工会、商工会議所などの活動の不活発をより意識している（図表２０）。

★★ご連絡、お問い合わせは・・★★
研究調査部、松田・久保田まで
E-mail：info@ari.co.jp

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